(建築ライター 取材・執筆)
住宅地の一角にある、レトロな洋館。その前庭へと続く格式ある数寄屋門を、以前、忠建築で設計・施工させていただきました。
その1年後、お施主さまから再びご縁をいただき、前庭に面した掃き出し窓の外に、柵付きのデッキを設置することになりました。
レトロな洋館に調和する格子の機能美
数寄屋門を入ってすぐ右手に、掃き出し窓があります。この赤みがかった重厚な木製サッシをぐるりと覆うように、柵を取り付けていきます。
前庭に面した掃き出し窓は、自宅を訪れる人の視線を受けやすい一方、生垣で囲まれた敷地内は一度足を踏み入れると外からの視線が届きにくく、以前よりプライバシーの確保と防犯対策が課題となっていました。
これらの問題を解消するために、今回設置した柵付きデッキ。格子には奥行きのある板を使っているため、斜めからのぞき込んでも内部までは視線が届きません。
こうして外部からの視線を遮りつつ、室内からは適度に外の景色を楽しめるよう、絶妙なピッチで格子をレイアウト。もちろん、窓を開ければ風もきちんと通ります。
さらに、数寄屋門の屋根に届くほどの高さをもたせることで、目隠しだけでなく侵入防止の効果も高めています。
この繊細な縦格子も、外からのプライバシー性と防犯性の両面をカバーするとともに、レトロな洋館にも和風の門構えにもマッチする垢抜けた意匠性を実現しています。
アンティークな蔵戸と木格子の一体感
側面が斜めになっているのは、2階バルコニーの外壁と角度を合わせ、左右対称にするため。玄関ポーチに立っても圧迫感がありません。
向かって左の玄関側には、使い込まれた木味と独特の風情を持つ蔵戸を組み込みました。
『蔵戸』というのは名前の通り、蔵を出入りするのに使われていた扉のこと。自宅の蔵で使われていたものをリノベーションや新築の際に再利用したり、なかには古物屋で購入したものを古材やアンティーク品として使用する方もいらっしゃるほど、貴重なものです。
今回使用した蔵戸は、もともと他所のお宅で使われていたものを奥様が気に入って譲り受け、再利用しました。
この蔵戸の雰囲気を損なうことなく、また建物の洒脱な外観にも違和感なく溶け込むよう、格子のデザインにも細部にまでこだわっています。
木の風合いで語る住まいの歴史
格子1本1本の太さや間隔、奥行き。蔵戸との調和を考えながら、1つひとつの要素を慎重に決定していきます。もちろん、数寄屋門や邸宅全体との調和も考えなければなりません。
完成した木格子は、杉材の赤身と白身がほどよく混ざり合い、蔵戸や雨戸の色味ともうまく溶け合った、味わい深い仕上がりに。
格子1本1本の太さや間隔、奥行き。蔵戸との調和を考えながら、1つひとつの要素を慎重に決定していきます。もちろん、数寄屋門や邸宅全体との調和も考えなければなりません。
完成した木格子は、杉材の赤身と白身がほどよく混ざり合い、蔵戸や雨戸の色味ともうまく溶け合った、味わい深い仕上がりに。