(建築ライター 取材・執筆)
京都にほど近い大阪府島本町にて、個人邸の門戸の建て替え工事を行いました。
日本の伝統が息づく数寄屋門。
その向こうに見えるのは、吹付の真っ白な外壁に木製建具を組み合わせた、昭和の洋館。
今は“ハイカラ”といってもわからない人が多いかもしれませんが、「西洋風でしゃれた様子」を表す言葉として、明治後期から使われるようになった流行語です。
和と洋が見事に融合し、住宅地の一角に昭和モダンな雰囲気を漂わせます。
破風板が描く、やわらかな曲線
屋根の両側、いちばん外側を覆う木の部材を『破風板(はふいた)』といいますが、よく見るとこの板が弓なりに弧を描いているのがわかりますか?
実際に板が曲がっているわけではありません。こうして破風の下端に緩やかなカーブをつけることで、やわらかい表情が出るよう工夫しています。
門とはいえ、ディテールにはしっかりとこだわります。
槐の一枚板が織りなす、和の上質感
柱の上部に渡した貫(ぬき)には、槐(えんじゅ)の一枚板を使用しています。
槐。聞き慣れない言葉かもしれませんが、ミモザの木といえばおわかりでしょうか?
槐は木目の美しさが特徴的で、ところどころ黒く艶光りしたような茶褐色の色味と切り出した木材そのままの造形が、サラリとした数寄屋の美しさに重厚感を添えています。
一方、貫というのは建物を支える水平材で、文字どおり柱を貫通させ、楔(くさび)を打つことで2本の柱を固定します。
柱から突き出して桁を支えているの部材は腕木(うでぎ)。その腕木を下から支えているのが、肘木(ひじき)。ただの装飾ではなく、造形の1つひとつに意味があります。
こうして見上げる木組みの美しさは、日本建築の醍醐味ですね。
日本の伝統がもたらす、凛とした佇まい
門扉と袖は天然木と竹を使った、たて格子。
屋根は銅板の一文字葺き。棟の部分には冠瓦を載せています。
仰々しさのない、品のある数寄屋門に仕上がりました。
青々とした生垣と槙の木に彩られ、凛とした表情で佇む日本の伝統美。
門戸の右手にある箱型の郵便受けも、忠建築の造作です。
数寄屋門のミニチュアみたいな門柱に取り付けて、アプローチでお客さまをお出迎え。
門まわりに込められた、日本の伝統的な建築様式と匠の技術。
住まいのグレードをワンランクアップする本格的な数寄屋門のご依頼も、忠建築にて承っております。