間取りは“かたち”じゃなく、“暮らし”をつくるもの

こんにちは、忠建築の上山です。
今回は、家づくりの最初のステップである「間取りづくり」について、自分が大切にしていることを書いてみたいと思います。

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僕は宮大工としてお寺の建築に携わってきましたが、そこでは間取りを一から考える経験はありませんでした。
お寺という建物には、ある程度決まった型や伝統的な配置があります。
それに従って技術を尽くすのが自分の役割でした。

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けれど、住宅は違います。
家はそこで暮らす人のためのもの。
家族構成や生活のリズム、敷地の条件、将来の暮らし方までを考えなければならない。
決まった型なんてないし、むしろ人の数だけ「正解」があるような気がしています。

そんな家の間取りを考えるという仕事は、最初は正直とまどうことも多かったです。
でも今では、この作業こそ家づくりの一番大事なところだと感じています。

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打ち合わせでは、お客様のご希望や暮らしのイメージをしっかりお聞きして、何度も図面を描き直していきます。
一回の提案で決まることはまずありません。
「やっぱりここはこうしたい」「子どもが成長したらどうしよう」など、話し合いながら少しずつ形にしていく。

そして、ようやく「これでいきましょう」と言っていただけたとき、僕はホッとします。
けれどそれと同時に、「絶対いい家にしよう」と気合いが入る瞬間でもあります。
その人の暮らしを背負うという責任感と、ワクワクする気持ちが同時にやってくるような感覚です。

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最近は、最初の打ち合わせでお客様が自分で描いた間取り図を持ってきてくださることもあります。
そのお気持ちはとてもありがたいのですが、時には「少し迷いがありそうだな」と感じることもあります。
そんなときは、一度その案を置いておいて、まずはじっくりヒアリングだけをさせてもらえると、新しい提案ができるかもしれません。
白紙から一緒に考えることで、よりしっくりくる「暮らしのかたち」が見えてくることもあるのです。

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間取りを考える時間は、家づくりの第1段階であり、とても大切な時間です。
図面を描く前に、どんな暮らしをしたいのかを共有すること。
そこを丁寧に積み重ねていくことが、結果的に「いい家」につながっていくと信じています。

これは新築だけでなく、リフォームでも同じです。
間取りをどう変えるかによって暮らしやすさが大きく変わりますし、既存の建物を活かしながらも、今の暮らしに合った形をつくることがとても大切だと思っています。

これから家づくりやリフォームを考えている方にも、そういった時間を一緒に楽しんでもらえたらうれしいです。

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