こんにちは、忠建築の上山です。
今回は、普段の住宅とはひと味違う「社寺建築」について、僕自身が大工として感じている魅力や見どころを少しご紹介したいと思います。
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社寺建築は、木材の扱い方から空間のスケールまで、住宅とはまったく違う世界があります。
中でも特に感じるのが、「木材の大きさ」と「屋根の曲線」の存在感です。
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まず、お寺で使う木材はとても大きなものが多くなります。
これは、なんといっても屋根が大きいからです。
社寺建築では、重厚な屋根を支えるために太くて長い梁や柱が必要になります。
そして、それらをすべて木の力で支える構造にするのが、宮大工の仕事です。
中に入ったときに感じる「安心感」や「堂々とした雰囲気」は、こうした大きな部材に支えられているからこそ。
その空間の包容力が、訪れる人の心を落ち着かせて、お参りや法要を静かに営むことができる場になっているのだと思います。
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次は屋根についてです。
ほとんどの人は、屋根の形の違いから社寺建築と住宅との見分けがつくと思います。
その屋根は社寺建築において“腕の見せどころ”とも言える場所です。
瓦葺(かわらぶき)や檜皮葺(ひわだぶき)、銅板葺きなど、素材によって見た目も異なりますが、
国宝や文化財に指定されているお寺を見ると、どれも屋根の曲線が本当に美しいです。
その美しさをどうやって出すかは、大工の技術とセンスが問われます。
屋根廻りに関しては、紙の図面だけではなく原寸場(げんすんば)という広い部屋に原寸大の屋根を書き起こします。
この時に納得のいく線を描くことがとても大切です。
専門的な話をし始めると長くなりますが、もしお寺を見る機会があれば、ぜひ屋根の線の美しさにも注目してもらえたら嬉しいです。
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社寺建築は、暮らすための建物ではなく、人が集まり祈り、心を整えるための場所です。
だからこそ、見た目の美しさや安心感が大切です。
そのための技術が宮大工には求められ、それがまたやりがいにもなります。
僕自身、住宅とは違う緊張感の中で仕事をすることで、大工としてたくさんのことを学ばせてもらいました。
この経験は、今の家づくりにも確実に生きていると感じています。
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ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
また次回も、日々の仕事の中で感じたことや、家づくりにまつわるお話をお届けできたらと思っています。