こんにちは、忠建築の上山です。
今回は、家づくりの中でも意外と奥が深い「建物の配置と方角」について書いてみたいと思います。
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建物や各部屋の配置を決めるとき、僕たちはいろんな要素を総合的に考えます。
例えば、敷地条件、周囲の建物との関係、日当たり、通風、プライバシーなど。
その上で、ご家族の生活動線や理想の暮らし方に合わせて間取りや配置を考えていきます。
また、家相や風水といった考え方も、昔から大切にされてきました。
方角との関係性を重視することで、より快適で健やかな住まいになるという知恵が詰まっているのだと思います。
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例えば、風水では「玄関は東南や南が吉」とされることがあります。
これは、太陽が昇っていく明るい方角から良い“気”が入ると考えられており、実際に東南側に玄関を設けると朝の光が入りやすく、明るくて爽やかな印象になることも多いです。
こうした古くからの知恵には、自然の理にかなっている部分が多く、理屈を超えた安心感を感じられる方もいらっしゃいます。
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ただし、それをすべて優先したことで、日々の暮らしに無理が出てしまうケースもあります。
たとえば、前面道路が北側にある敷地なのに、どうしても南側に玄関をつけたいというご希望があるとします。
その場合、駐車場から家に入るには建物をぐるりと半周しなければならないこともあります。
毎日のことを考えると、少し不便に感じる場面が出てくるかもしれません。
もちろん、家相や風水に基づいた配置を大切にされるお気持ちは、僕自身もとてもよく理解しています。
だからこそ、それをどう日常の暮らしと両立させるかが、設計の腕の見せどころだと思っています。
実際には、考え方を少し柔軟にすることで不安が解消されたり、家相の観点からも“回避法”とされる配置の工夫がある場合もあります。
そうした知恵や工夫を取り入れながら、納得できる形を一緒に探していけたらと思います。
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ちなみに、お寺の建物にも方角との関係は深く関わっています。
仏教では、「西方極楽浄土」に由来して本堂を西向きに建てる思想があり、
また、風水的な「四神相応の地」──すなわち、東に川(青龍)、西に道(白虎)、南に池や田(朱雀)、北に山(玄武)という配置が理想とされる考え方もあります。
ですが、実際には地形や周囲の環境、敷地の都合などによって、そうした理想通りに建てられていない寺院もたくさんあります。
それでも、そこに人々が集い、心を落ち着かせる場になっていれば、その場所は立派に「機能」していると僕は思っています。
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家づくりにおいても大切なのは、「どう建てるか」よりも「どう暮らしていくか」。
方角や配置の考え方は、住まう人にとって納得のいく大切な要素です。
その上で、暮らしやすさや日々の快適さともきちんと向き合って、
ご家族にとって本当に心地よい住まいを一緒に考えていきたい。
そんな想いで、これからも家づくりに向き合っていきたいと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。